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なのかななよ

七日七夜

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,818 字 · 36 页

青空文庫

六

骨のふしぶしが痛い、しきりにくしゃみが出た。水洟が出た。頭がびんびんし、足に力がなかった。空腹はなおったが、酔がさめたとみえて酒が欲しい。躯がばかに震え、がちがちと歯が鳴った。

「いいきびだ、ざまあみやがれ」

そのほかにもう言葉はなかった。

――朝までお寝かし申しいせんよ。

――そんなとけえのたばるでねえ。

――こむらがえりがしんす。

――このひょうたくれア。

絶えずそんな幻聴が聞えた。

――ひと晩に百何両、うろんなのはこっちだ。

――金を出しな、金、金、勘定、勘定。

――番所へいって話しをつけやしょう。

これらの幻聴の伴奏のように、濡れて重くなった草履の、ぴしゃぴしゃという音が聞えた。気のめいるような、うらさびれたさむざむしい音が。

六

日は昏れかかり、雨は降り続いていた。

稼ぎ帰りの合羽や蓑を着た人がゆき交い、濡れた犬が尾を垂れて通ったりした。軒の低い、ちぢかんだような家並、いかにも貧しく、佗しげな街であった。しかし勝手口ではどの家でも、ことことと庖丁の音が聞え、物を煮たり焼いたりする匂いが、まるで幸福をひけらかすように漂よって来た。

昌平は雨の中をただ茫然と歩いていた。