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さんねんめ

三年目

山本 周五郎

「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页

青空文庫

一の二

五郎兵衛町の広田屋伊兵衛という大工のもとで、子飼いからずば抜けた腕を発揮し、十七歳の時にはすでに一人前の手間取りになっていた。……広田屋は当時左前で、友吉とその弟分の角太郎という二人しか職人をもっていなかったが、伊兵衛は友吉を一人娘のお菊の婿にして、やがて広田屋を盛返そうと考えていた。

一の二

ところが三年まえの春、伊兵衛は普請場で大怪我をしたのが因で、ついにはかないことになってしまった。……そしてその臨終に、お菊と友吉と夫婦になって、もう一度広田屋の名を盛返してくれと遺言したが、さらにそれへ付加えて、

――だが、それには友吉に頼みがある。

と苦しい息の下から云った。

――友吉はいい職人だ、けれどもたった一つの瑾は手慰みをする、おめえは隠していたつもりだろうがおらあ知っていた。

場合が場合だけに、友吉は匕首を胸へ突込まれたような気がした。事実……彼はその二三年来ひそかに博奕場へ出入りしていたのだ。

――お願いだ、友吉、叱るんじゃねえ、死んでいく伊兵衛が心からのお願いだ、どうか今日限り賽ころは捨ててくれ。

「あっしは、そのとき、……泣きました」

友吉はぐっと酒を呷った、「……そうです、泣いて親方に約束しました。