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さんねんめ

三年目

山本 周五郎

「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页

青空文庫

この場限り博奕は止めます、二度と賽ころに手は触れませんと」

「広田屋はさぞ喜んだろう」

「喜んでくれました、そして……その晩に亡くなったんです、あっしは親方の喜んで死んだ顔を見て、こいつぁ性根を入替える時だと思いました、それで上方へ立つ決心をしたんです」

「そりゃあまた、どうしてだね」

「悪る仲間のいる江戸から離れて、さっぱりと賽ころの汚れを洗ってきたかったんです、三年も足を抜きゃ仲間とも縁が切れる、それから新規蒔き直しに始めるつもりでした」

「そうだったのか、そんな入組んだ訳があったのかい」

仁太郎は友吉の盃に酒を注いだ。……とっぷり暮れた窓の外は、依然として滅入るような雨の音だった。

「それでなにか、そのときお菊さんのことはどうなってたんだね」

「広田屋が御存じのような訳ですから、一時店を畳んだうえ、八丁堀の角太郎の家へあっしの帰るまで預かってもらったんです」

「すると、……その留守の間に、角とお菊さんができちまってたんだな。ひでえ野郎があるもんだ、おめえが上方へ立ってから半年もしねえうちのこったぜ」

「そいつは本当のこってしょうか」

「お菊さんは評判の小町娘だったから、噂も相当派手だった、恥をかくのがいやでなかったら誰にでも訊いてみねえ、丸髷に結ったお菊さんが買物に出歩く姿ぁ阿娜なもんだったぜ」