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よのなかへでるこどもたち
世の中へ出る子供たち
小川 未明
「婦人朝日」1939(昭和14)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,905 字 · 8 页
正吉は、勤めるようになってから、こんな場所へは、先輩につれられたり、また社員たちときたことがあるけれど、小原も高橋も、きわめてまれなことだけに、話の合間に、頭を上げて、あたりを物珍しそうにながめていました。
話は、正吉と高橋の間で、いつかまたお母さんのことになったのです。ここでも、小原だけは、母の顔さえよく覚えていなかったので、二人の話を笑ってきくうちにも、どことなくさびしそうでありました。
「わがままいわなければ、よかったと思うよ。お母さんがいなくなってから、わかった。しかし、もう遅いのだ。よく無理をいったり、また頼んでおいたことを母が忘れたといって、小言をいったりしてすまなかった。」と、正吉はいっていました。
「僕も、悪いところでなければ、母と妹をつれていくんだけれどなあ。」と、高橋がいいました。これを聞いていた、小原は、
「いいなあ、君たちが、うらやましいよ。僕には、そうした思い出もない。小さいときから、母も父も、ないのだからね。」と、鼻をつまらせたのです。
「そう、もうこんな話はやめよう。」と、正吉が、いいました。
三人は、フライだのマカロニだの、いろいろ食べたり、サイダーや、コーヒーを飲んだりして、時計が九時を過ぎてから、そこを引き上げました。