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せそう

世相

織田 作之助

「人間」1946(昭和21)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页

青空文庫

七

夕方四時半から六時半まで切符は売止めになる。その時刻をねらって、売場の前にずらりと並んだ客に、宝塚行き一枚三円々々と触れて歩くと、すぐ売れてしまった。勘定すると五円の金が十五円五十銭になっていた。阿倍野橋へ行くにはもう時間が遅いし、何よりも腹がペコペコだ。バラックの天婦羅屋へはいって一皿五円の天婦羅を食べ、金を払おうとすると掏られていた。無銭飲食をする気かと袋叩きに会い、這うようにして地下道へ帰り、痛さと空腹と蝨でまんじりともせず、夜が明けると一日中何も食わずにブラブラした。切符を買う元手もなければ売る品物もない。靴磨きをするといっても元手も伝手も気力もない。ああもう駄目だ、餓死を待とうと、黄昏れて行く西の空をながめた途端……。

七

「……僕のことを想いだして、訪ねて来たわけだな」

「へえ」と横堀は笑いながら頭をかいた。今夜の宿が見つかったのと、餅にありついたので、はじめて元気が出たのであろう。

「電車賃がよくあったね」

「線路を伝うて歩いて来ましてん。六時間掛りました。泊めて貰へんと思いましたけど……」時計が夜中の二時を打った。

「泊めんことがあるものか。