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かずえはいそがしい

主計は忙しい

山本 周五郎

「奇譚」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,315 字 · 37 页

青空文庫

「まあそんな」折江は少し頬を染めながらこちらを睨んだ、「――こんなところで、そのようなことを仰しゃっては困りますわ」

「しかし、善は急げといいますからな」

「それにしても、此処までわざわざ追っていらっしゃるなんて」

「いやほかにも一つ用があったんです、武田をお付けしましたが彼に急用が出来ましてね、ここから帰すことにしますから、どうぞあとは二人だけお伴れになって下さい、これで申上げることは済みました」主計は馬を吉造から受取った、「――松乃どの、吉造もしっかり供をたのむぞ」

「ではもうお戻りなさいますの」

「なにしろ急用ですからね、どうぞ構わずいらしって下さい、私もお見送りをせずに引返します、お帰りになるまでには、日取りもきめておく積りです」

「なんてお忙しいのでしょう」折江はついそう云って笑いだした、「――ではこのまま」

御平安にと云って主計は振返り、そこに立っている平之助を促して道を戻った。――二町あまり来て見かえると、もう折江たちの姿は松並木のかなたに隠れていた、主計はそこから左手へ三段ほどはいったところに、いま満開の梅林があるのをみつけ、「あれへいって休もう」