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こじきがくせい
乞食学生
「若草」1940(昭和15)年7~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,682 字 · 68 页
とにかく、僕と一緒に来給え。」ともすると笑い出しそうになって困るので、私は多少狼狽して後をも振り向かず急いで歩き出した。
私の計画とは、計画という言葉さえ大袈裟な程の、ほんのささやかな思いつきに過ぎないのである。井の頭公園の池のほとりに、老夫婦二人きりで営んでいる小さい茶店が一軒ある。私は、私の三鷹の家に、ほんのたまに訪れて来る友人たちを、その茶店に案内する事にしているのである。私は、どういうわけだか、家に在る時には頗る口が重い。ただ、まごまごしている。たまに私の家に訪れて来る友人は、すべて才あり学あり、巧まずして華麗高潔の芸論を展開するのであるが、私は、れいの「天候居士」ゆえ、いたずらに、あの、あの、とばかり申して膝をゆすり、稀には、へえ、などの平伏の返事まで飛び出す始末で、われながら、みっともない。かくては、襖の蔭で縫いものをしている家の者に迄あなどられる結果になるやも知れぬという、けち臭い打算から、私は友人を屋外に誘い出し、とにもかくにも散策を試み、それでもやはり私の旗色は呆れる程に悪く、やりきれず、遂には、その井の頭公園の池のほとりの茶店に案内するという段取りになるのであった。