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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
それはあながち無駄なことではないと思う。
自分の研究の歴史を自分で書くのは、少し思い上ったことである。しかしそれを敢てするのは、少し思う節があるからである。
この書を読んで下さる方々は、すぐ思い付かれることと思うが、雪の結晶の研究などに、これだけの時間と労力とを払わなくても、もっと手早く切り上げて、もっと直接な問題の研究、たとえば飛行機の着氷防止とか、雪中飛行とかの問題に手をつけた方が良かったと思われるであろう。しかしそれが出来なかったところに、我が国に於ける科学研究の本統の姿があったのである。
昭和七年の暮、初めて雪華の顕微鏡写真を撮った頃は、札幌では物理の器械などは、ほとんど手に入らなかった。エボナイトの板を一枚手に入れるにも、東京へ註文を発して二ヶ月もかかることが稀れではなかった。その頃の世界の物理学は、ちょうど現在隆盛を極めている原子物理学の学問が、漸く欧洲に勃興して、その波紋が世界の隅々にまで響いて来ていた時代であった。
そういう時期に、私は北海道の一隅で、三年目の学生たちを相手に、細々と雪の結晶の写真を撮ろうと努力していたのである。そしてちようどその頃手に入った米国のベントレーの雪華写真帖を開きながら、ああいう美しい写真を一生のうちに五六千枚も撮って死んで行ったベントレーの努力に驚嘆した。