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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
この最後の会見を終えて、先生は東京へ出られる。しかし八月末にはまだ大学は開かれていない。「本郷なる学校へ赴く。扉閉ぢられて人の気なし」という状態である。それで先生は珍しく九月初めから一週間ばかり、江之島逗子に遊ばれた。随筆にある簑田先生の家を訪ね、留守番をされたのは、この時のことである。
大学の三年生として、先生は研究実験に著手され、かなり忙しい生活が始まった。夏子夫人への手紙も以前よりは、少し間遠おになったようである。しかしいつも念頭からは去らなかったらしい。「今日は夏よりの手紙来らんなと思ひつゝ小石川芭蕉庵に田中子爵を訪ふ 在宅 新築中の邸宅を巡覧す。四時過帰る。夏よりの手紙来れり。返事認む」とか、「午前夏へ端書認め高等学校に行きてオルガン引く」とか、「夏より写真来れり。夜トムソンのダイナモを読む」とかいうような記事が、三四日おきに書き残されている。病状は徐々ながら次第に悪化して行くようである。
九月から毎日ちゃんとつけられている日記が、十月十三日から三日間空白になっている。そして十六日になって、「夏の病気も又模様よく最早気遣なる事もなかるべしとの事なり。