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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
最初の冬の研究は、今から考えてみれば、全研究費が五十円くらいの研究であった。しかしそういう研究でも、とにかく纏めておけば、それが次の年の研究に如何に役に立ったかは、本書に詳しく書いた通りである。それは、実をいえば雪の結晶についてのわれわれの知識を拡める上に役立ったよりも、むしろ次の冬の十勝岳遠征を可能にした点に於て、より以上役に立ったのである。
そういうことは、科学の研究という筋道の上からのみ見れば、邪道であったかもしれない。しかし第二年目の十勝行によって初めて北大に於ける雪の研究が緒についたといえるのである。それはその次の年には、二千円の研究費となって酬いられたからである。大学の一教授が全教室を挙げての研究に、年額二千円の研究費が、特筆すべき事項であった。それが十年前の日本の科学者の置かれた立場であった。
この補助に気を大きくして、雪の研究室を一棟建てたのが、第三年目の初冬であった。大学の実験室での雪の仕事に一番困るのは、暖房が通っていることである。それで理学部横の空地に、全部トタン張りの寒い実験室を一棟建てた。建築費は七百円であった。
この研究室が出来た時に、寺田寅彦先生からお祝いの葉書が来た。