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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
詩人への註文
「絵なき絵本」には、たいへん立派な作品がある。
それにあやかるというのも不遜な話であるが、「詩なき詩論」を考えてみようという気になった。それは表題の「詩人への註文」という無理な題を押しつけられた苦しまぎれに、ふと頭に浮んだテーマである。
私はほとんど詩を読まない。別に理由はないので、面白味がよく分らないからである。昔高等学校時代には、御同様に文学熱に少々浮かされたこともある。その頃の友人たちは、夢中になって外国の詩の翻訳などに入れ揚げていたものであるが、私にはそれ等の近代詩はよく分らなかった。そして分らないと思われるのがいやさに、適当に敬遠してしまったのが、つい今日まで根をひいたものらしい。
私が時々ひろげてみた詩は、藤村詩集くらいのものである。少々気恥しくもあるが、あの程度の甘いものが、ちょうど身に合っていたのであろう。もっとも商売がまるでちがうので、悪びれる必要もなく、藤村くらいのところがちょうどよいのだなどといってすましていたわけである。そして相手がおとなしい学生などの場合には、時たまそれに輪をかけることもある。漢詩の意識で育て上げられた日本人に、日本語の詩を教えたものは藤村だよなどと、少々いい気になっていたものである。