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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,245 字 · 33 页
いいえ、いざお嫁入りをして、あんな目にあいますまでは、本当に私の独合点に過ぎないのだと、しいてもそんな風に、こちらに都合のよい様に、気休めを考えていたことでございます。これで、いくらか、うぬぼれもあったのでございますわね。
あの時分の娘々した気持を思い出しますと、われながら可愛らしい様でございます。一方ではそんな不安を感じながら、でも、隣町の呉服屋へ衣裳の見立に参ったり、それを家中の手で裁縫したり、道具類だとか、細々した手廻りの品々を用意したり、その中へ先方からは立派な結納が届く、お友達にはお祝いの言葉やら、羨望の言葉やら、誰かにあえばひやかされるのがなれっこになってしまって、それが又恥かしいほど嬉しくて、家中にみちみちた花やかな空気が、十九の娘を、もう有頂天にしてしまったのでございます。
一つは、どの様な変人であろうが、気むずかし屋さんであろうが、今申す水際立った殿御振に、私はすっかり魅せられていたのでもございましょう。それに又、そんな性質の方に限って、情が濃かなのではないか、私なら私一人を守って、凡ての愛情という愛情を私一人に注ぎつくして、可愛がって下さるのではないか、などと、私はまあなんてお人よしに出来ていたのでございましょう。