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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
徴かに陽ざしが洩れてるかと思うと、もうまたたくうちに野づら一めん真ッ暗になってしまう。丘陵のような山脈の遠くから激しく移動する灰色の雲と一緒に、湿気をもった空らッ風が轟々と唸をあげて襲ってくるのだった。
「オイ、灸をすえてくれ……」
縁ばなへきて双肌ぬぎになると、いつものように台所から濡れ手を拭き拭き女房があがってくる。
「いったい、いつ頃まで滞在するの?」
彼女は線香の火をかざしながら、亭主の顔色をみいみい不平を愬えるが、鷲尾はけんめいに下ッ腹に力をいれ眼をつぶっているのだ。
「ちゃんと食費まで入れてるのにさ、まるで食客みたいにツンツンされるンだもの、たとえ乞食したってまだ東京の方がいいわ」
「…………」
「ゆんべも○○さん(妹)が、毎日米が三升ずつも減るッて、大声で怒鳴っていたのよ」
「あッちち……、もう止せ」
鷲尾はまた戸外へ出た。しかし会いたい人達のところへもウッカリ出かけてゆかれず、こんどの帰省には訪ねてくる人もパッタリという程少ない。非常に狭い世間だった。――
終日、肥汲車や荷馬車のゴトゴトとひびいている退屈な町、馬糞に汚れた一本筋の町を、一日に二三度は往復した。