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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
中折帽の庇下からチラチラ光っている無感動な冷たい眼や、鉄柱の蔭で一人一人に薄笑いを浴びせている若いモダンボーイ風のや……。
ホームの半程から、鷲尾も先を争う人々に雑って、赤く力みながら駈け出したが、ひょッと横合から出て来た男に肩をツカまれてひっくり返りそうになった。――
「きみ、きみ――何処へ行くんですか」
「東、東京です」
ギックリして、声を嗄れさせながら、鷲尾は自分のネクタイが歪み、ズリ落ちそうな帽子の下から、蓬々の頭髪がハミ出してるのに慌てて気がついた。
「東京は何処だネ、職業は?」
一々答えながら、はァはァ駈けて来る女房を手招きすると、例の男は安心したのか、質問を途中で打ち切って、向うへ去った。
「怖いわね……」
「……………」
女房はオビえたような顔色で、汽車が無事に動き出してからも幾度も繰りかえした。鷲尾はいつの間にかさっきの明るさを失い、また軽くも返事出来なくなっている自分を発見したが、却々簡単にナオらなかった。
闇を衝いて疾走っている三等急行は、非常に動揺が激しかった。女房は到々三番めの子を腰掛に抛り出し、真ッ青な紙のような顔をして窓口にしがみついていた。