轻松读懂日语经典作品
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しょや
初夜
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页
代二郎は父が生きていなくてよかったと思った。父の唯右衛門は去年の五月に病死し、そのため桃世との結婚も一年延びたのであるが、善良で小心な父が生きていたら、どんなに心痛し途方にくれるか、そうしておそらく桃世との婚約も破棄されるだろうということが、彼には眼に見るように想像された。……殿町の家から登城するには巽門が近い、だが、そうすると、馬場下の除村家のそばを通らなければならないので、代二郎はまわり道をして、大手門へ向った。途中の町筋は色めき立っていた。早くも逃げだす人たちだろう、老人や子供をせきたてたり、家財を荷車に積んだりして、辻町から檜物町のほうへ、群衆が列をなして動いていた。
大手門には槍組の人数が出ていた。代二郎が通ると、かれらは異様な人間をでも見るように、眼をそばだて、また聞えがしに囁きあった。
「脇屋だ、除村の妹のあれさ」
「どうしたんだ」と云う声も聞えた、「彼は徒党に加わらないのか」
代二郎は聞きながして通った。
そこから中の口へゆき、中の口からあがって、中老の役部屋へ入るまで、ゆき交う人たちすべてがそういう眼で彼を見、不審そうに囁きあうのであった。