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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

何があまりあまりだろう、可笑いね。そういってやると、それッきりおやめになったが、十四五枚もあった写真を、また見られちゃあ困ると思ったがね、人にも遣られず、焼くことも出来ずさ、仕方がないから、一纏めにして、お持仏様の奥ン処へ容れておいてよ。毎日拝んだから可いではないかね。」

先刻に干したる湯呑の中へ、吸子の茶の濃くなれるを、細く長くうつしこみて、ぐっと一口飲みたるが、あまり苦かりしにや湯をさしたり。

少年はただ黙して聞きぬ。

お貞は口をうるおして、

「児が出来る、もうそのしくしく泣いてばかりいる癖はなくなッて、小児にばかり気を取られて、他に何にも考えることも、思うこともなくッて、ま、五歳六歳の時は知らず、そのしばらくの間ほど、苦労のなかった時はないよ。

すると、その夏の初の頃、戸外にがらがらと腕車が留って、入って来た男があったの。沓脱に突立ってて、案内もしないから、寝かし着けていた坊やを置いて、私が上り口に出て行って、

(誰方、)といって、ふいと見ると驚いたが、よくよく見ると旦那なのよ。旦那は旦那だが、見違えるほど瘠せていて、ま、それも可いが妙な恰好さ。