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るそんのつぼ
呂宋の壺
久生 十蘭
「オール讀物」1957(昭和32)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,375 字 · 36 页
真壺の絵を見せて、こんな壺を扱ったことはなかったかとたずねると、窯元のおやじは、古今を含めて、呂宋にあるかぎりの壺はみな知っているつもりだが、こんな壺は見たことも手にとったこともないと、立ち切ったようなことをいった。
尤もらしい口上だが、そのまま鵜呑みにするわけにはいかない。陶物を出す窯はほかにもあるのだ。市外のパリアンに明人の窯があるというので、翌日、行ってみたが、安南あたりのものらしいというだけで、かくべつな意見もなかった。
詮じつめたところ、助左衛門が持ち帰ったのは呂宋のものではなかったらしいことはわかったが、これは、どこの国の、なんという陶物と言ってくれる人間がいないのが、もどかしい。それに、呂宋焼でもないものを、なぜ呂宋だなどと言いたてたのか、その辺のところが理解できない。なぜという疑問を解くには、拙斎入道がいったように、助左衛門を探しあてて、話を聞くよりほかに方法がない。
マニラの日本人町はカンデラリア天主堂の裏の一郭と、マニラの湊口、ディラオの郊外にある。
助左衛門ほどの男が、日本人町などに逼塞していようとは思えない。いるならいるで、着いた日のうちに消息が知れるはずだ。