轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
るそんのつぼ
呂宋の壺
久生 十蘭
「オール讀物」1957(昭和32)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,375 字 · 36 页
四
四
モニカは見張台にあがるとすぐ、弟の菊丸を抱いてやり、ずっとその恰好を保っていた。吉之丞は、もうすこし楽にしているようにいったが、微笑するだけで、姿勢を崩そうとはしなかった。
菊丸は荒々しい環境に脅えて、ぐったりと弱りこんでしまったが、七日目ぐらいから、果敢ないようすになり、手足をひきつらせたり、うわごとを言ったりするようになった。吉之丞は大谷姉弟のそばに坐って、一日ごと菊丸が弱って行くのを見ているのだが、見ているだけで、どうすることもできなかった。
十九日の朝、吉之丞が菊丸の顔をのぞいてみると、菊丸は死んでいた。いつ息をひきとったのか、抱かれたままの恰好で固くなっている。モニカは菊丸が死んだことも知らずに、腕の中に抱きしめているのである。
そういう吉之丞自身、ただもう物憂いばかりで、眼玉をうごかす元気もない。窮屈なところにあおのけに寝て、うつらうつらしていると、頭の中に霞がかかったようになって、生きているのか死んでいるのか、わからなくなる時がある。すぐそばにいながら、モニカも吉之丞も、よほど前から口をきかなくなっていた。朝々、まだ生きていることを知らせるために、眼でうなずきあうのが精一杯のところである。