轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わし
和紙
東野辺 薫
「東北文學」1943(昭和18)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页
はじめての人だが誰だろうと訝る妹のよしには、専売局の友達が惣吉の行先を訊いてきたのだと、それでも咄嗟に誤魔化すことが出来た。相談というものの見当も皆目つかないが、何かあったら遠慮なく言ってくれと、あの時はっきり言い切っている手前もあり、会わないわけにはゆかなかった。先方には、なるほど日曜という休日には相違ない。しかし、こちらの村の仕事では平日に変りはなく、しかも今最繁忙期である大切な半日をつぶすことが、どんなものであるかを一向に考えていないことにも、最初は腹立たしくさせられた。が、落ちついてみれば、これは、女工である女にそこまで気の配れるはずはなかった。
もともと弟の惣吉が、両親にはひた隠しに隠しながら、友太にだけこの女のことを打ち明けて、あとの一切を委せて征ったということは、異母兄である友太に寄せる全幅の信頼を示してはいた。たとえば惣吉の肚の奥には、出征中女の身の上に何かいざこざが起って表面化されねばならない場合、父と母とがそれぞれの立場から抱いているに違いない友太に対する複雑な心理の陰影を、言わば一つの緩衝地帯に利用して、自分に向けられるものを少しでも緩和しようという、多少狭い虫のよさがあったとしても、それくらいのことは許せないものでもなかった。