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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

良三郎とユミとの感情がこじれ切っていることも知っていたし、それはそれとして、ユミが兄の友太をひそかに好いているのではないだろうかと、そんなふしぶしに時として思い当るのであった。無論、他人の許婚であるユミを兄がどうしようはずもなく、ユミ自身も結局は良三郎に嫁ぐ覚悟はしているに相違ない。つまりは自他共に認めたどうにもならぬ境界にあるという、ユミのあきらめからくる気のゆるみが、不覚にも心の奥を覗かせることになるのだろうか。ともかくよしは、ユミの前では、言い出された自分のことにすぐ乗る方が安全だった。

「こないだあの人から手紙が来たの。」

きかせられるのなら嫌だからというユミに、それどころではない、ちょうどあの人が出征する頃、原料の統制が強化され出したので、今年あたりはどんな具合か、それを心配してよこしたのだと、ところどころ繁治の手紙の文句通りの説明になった。それで、心配するほど行き詰っているわけではなく、与えられた原料で皆が真剣にやってる。殊に、軍需紙を漉くようになってからの村の人達の気持はまるで改まった。こんな意味を二晩がかりで書いてやったと、よしは多少得意な眼色をした。