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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

予期以上の尖った声であった。母のいうことがこの場合のよしには少し呑み込めない見当違いのものなので、何か言い返したい気はしたが、思いがけない母の見幕にそれなり口を噤んでしまった。むッつりと黙った母も、台所で荒い茶碗の音をさせていた。

「兄さんのお嫁さんでもくれば、お母さんの機嫌もよくなるんじゃないかと思うの。」

納屋の前の陽だまりでとしゑが言うと、よしも分別らしい眼をしばたたいた。

「ユミちゃんが駄目としたって、ほかにいくらもあると思うわ。」

「ユミちゃんだったらいいんだがなァ。」

「兄さんはうちのひとなんかと違って堅いから……。」

そう言って笑ってから、としゑは漉屋に入って行った。

「兄さん、早くお嫁さんを貰うといいわ。」

藪から棒に言いかけても、友太は眉一つ動かさない。ものに没入し切ったやや険しい横顔を見せたまま、ざぶりと簀框を槽に浸して、いい娘っ子がいるのかやと、それでも口だけは相手になってきた。

「兄さんだったらいくらでもあるわ、ね、おせんちゃん。」

真顔でいうと、わきで楮叩きをしていたせんは、首を縮めて舌を出した。

ユミは相変らず時々顔を見せていた。