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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

そして道を曲がったところで、そこが大森だということを信三は知った。まだ大学の医科に席のあったころ、そこに仲の良い友人がいて、たびたび訪ねて来たことがある、たしかその道の一つ裏を奥へはいったところだった。そう思ったが、もちろん訪ねる気持などは動かず、重い足をひきずるようにしてまっすぐに駅へいった。

酔が理性を麻痺させる時間はながくはない、横浜で乗り換えた列車は空いていて、ほとんど十二三人しか乗客のいない二等車に坐ると、信三の心は再び死の恐怖と絶望感で圧倒された、搾木にかけられるように胸苦しく、絶えず一種の呼吸困難におそわれた。

「四年間、……四年間、自分の生命はそれだけしか続かないのだ、こうしている今も、病毒は細胞組織を破壊しつつある、やがてあらゆる臓器が侵され、心臓は鼓動を止める、そして自分は死体となって横たわるのだ、太陽は輝かしく照り、人々は愛したり生活を楽しんだりするだろう、しかし自分はひとつかみの灰になってこの世から消えてしまうのだ」

ああ、と彼は低いうめきごえをあげた。――やっぱり知らないほうがよかった、そういう後悔がわきあがり、推定を与えた医者を呪った。