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よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
六
六
夜の二時だった。
彼は寝室を出て書斎にはいり、戸棚の奥から拳銃を取り出した。召集されたとき買ったもので、戦地ではいちども使わなかったのだが、どうやらこんどは必要になったようだ、ケースを明けてみると弾丸が填まっていた。彼は安全装置を検べたり銃口をのぞいてみたりした、冷たい手触りと、適度な重さが、ふしぎなほど気持をおちつかせた。彼は銃口をこめかみへ当て、引金を引く動作をした、「……それでなにもかも解決だ」そんなことを呟やいたりしたが、やがて仕事机に向かい、スタンドをつけてそっと拳銃を置いた。それから日記帖をひろげ、ペンを取って、一字一字ひどく力をいれながら書きはじめた。
――自分は自分の生命が今後四年間しか続かないという宣告をうけた。病因はガス壊疽である、すでに治療の手段はなく死を待つばかりとなった、今日まで続けて来た研究も、現在の自分にはもう情熱がもてなくなった。……そして近いうちに恐らく自殺するだろうということ、またその瞬間の来るまで、死を宣告された人間の心理的苦悶がどんなものか、科学者の眼をもって冷静に記録してみたい、そういう意味のことを書いていった。