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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

液がなくなったわ。新しい液を注がなくては……」

雪子の求める薬物ができ上ったのは、もう暁に近かった。

雪子はその薬物をコップへ移して水を加えてかきまわした。その上へ、別の薬品をいくつも投げこんだ。薬液の色はいくたびか変り、最後には薬がかかった色の液が白い泡をたてて沸騰し、もうもうと白煙が天井の方まで立昇った。雪子はそれを見ると狂喜してコップを眼よりも上に高くさしあげ、

「ああ、ついにあたしは、元の世界へかえれるんだわ。そしてあたしの研究の勝利が確認されるんだわ。ああ、なんというすばらしい喜び、すばらしい感激でしょう」

といってから、貴重な薬液の入った泡立つコップをもう一度高くさし上げ、それからコップを自分の唇のところへ持っていって、一気にそれを呑みほしたのだった。

からとなったコップが、雪子の唇をはなれ、しずかに台の上におかれた。が、次の瞬間、コップは横にとんではっしと壁にあたり、粉々に砕けた。雪子が腕を大きく振ったからであった。腕だけではない。雪子は腰から上の上半身をゼンマイ仕掛けの乗馬人形のように踊らせて振りまわした。髪がくずれて焔のように逆だち、両眼は皿のようにかっと見開き、口は今にも裂けそうになったが、とたんにはげしい痙攣と共に口から真黒い汁をだらだらと吐きはじめた。