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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

問答

「いえ、たしかに見ましたですよ。廊下をこっちへ歩いていくのを……」

「変だね。でもたしかに入ってこないよ」

「じゃあ、あれは幽霊だったでしょうか」

「幽霊? そんなものが今時あるものか」

「いや、幽霊ですよ。幽霊にちがいないと思うわけは、後姿は雪子に違いないんですが、背がね、いやに低いんですよ」

そういって武平夫妻がいいあらそっているとき、川北先生が突然大きな声をあげた。

「これは変だ。いつの間にか『研究ノート』の第九冊がなくなっているぞ。さっきまでたしかに第一冊から第九冊までそろっていたのに……」

先生は丸卓子の上にならんだ「研究ノート」の列を指しながら唇をぶるぶるふるわせていた。

怪また怪。果してそれは雪子の幽霊だけだろうか。引抜かれた「研究ノート」第九冊は誰が持っていったか。木見雪子学士の研究室には深い異変がこもっているように見える。

問答

道夫のおどろきはその絶頂に達した。

雪子の幽霊が廊下を歩いてこっちへきたというのに、その影も形もない。そして室内にさっきまではたしかにあった研究ノート第九冊がなくなっているというのだ。なんという不思議なことの連続だろうか。