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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

村の青年二人がていねいに礼をした。

「おい君」と課長は成宗巡査を呼び「一切誰にも会わしちゃいかん。厳命だ」

「は、はい」

成宗は身体を縮めて、ちらりと蜂矢の方を見た。蜂矢は知らん顔をして、彼の助手のためにライターの火を貸してやっている。

「かべだ。かべだ。かべの中へぬりこまれちまった。あああッ……」

とつぜん川北先生がうわごとをいった。目をつぶっている。青い顔には玉のような汗がうき、長い頭髪がべっとりぬれて眉の方までのびている。黒川医師は目を大きくむくと川北先生の眼をみた。

「かべか。かべがどうしたというんだ」

課長と課員が、川北先生の枕頭をぐるっと囲んだ。川北先生の唇がぴくぴくとふるえるだけでもう声はでなかった。

「この病人はうわごとをさかんにいうのかね。ねえ君たち」

と課長は、村の青年にきいた。

「は。ときどきいいます」

「蜂矢さんが手帳に書きとめて居られましたです。蜂矢さんをお呼びしましょうか」

「いや、よろしい」

課長は首をかたくしていった。

「……流れる、流れる、流れる」

又もや川北先生がうわごとを始めた。

「うっ、苦しいとめてくれ、誰かとめてくれ。黄いろいスープのような……」