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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

出現の時刻

出現の時刻

古島老刑事は、さっきから、銀ぐさりのついた大型懐中時計の指針ばかりを見ている。

もう夕刻であった。折柄、空は雨雲を呼んで急にあたりの暗さを増した。ここ捜査課はいつもとちがい、この日は電灯をつける事が厳禁されていたので、夕暗は遠慮なく書類机のかげに、それから鉄筋コンクリートを包んだ白い壁の上に広がっていった。

課長の机の上には、雪子学士の研究ノートが数冊、積みかさねられてある。課長の椅子はあいている。課長の椅子の左横の席に、幽霊係の古島老刑事が、幽霊の餌の方を向いて腰をかけ、今も述べたように懐中時計の文字盤をしきりに気にしてびくついているのだった。その隣に、幽霊助手を拝命した猛者山形巡査が、これは古島老刑事とは反対に、大入道であれモモンガアであれ何でもでてこい取押えてくれるぞと、肩をいからし肘をはって課長の机をにらんでいる。

その他の席には、課員が十四五名、おとなしく席についている。しかし彼等は書類を見ているように見せかけてはいるが、実はそうではなく、いつでも課長の命令一下、その場にとびだせるように待機しているのだった。その中に課長の顔と蜂矢探偵の顔がまじっていた。