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とさのくにばしら

土佐の国柱

山本 周五郎

「読物文庫」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页

青空文庫

……気早の者は刀を抜いて即座にも斬ろうとする。そこへ、騒ぎを知って高閑斧兵衛が走せつけて来た。

「鎮まれ鎮まれ。なにを騒ぐ」

「狼藉者です」

先供のなかから、堂上喜兵衛という一徹者が進み出でて答えた。

「お供先へ生魚を抛り居ったのです。御仏事と知って此奴、お行列を汚し居ったのです」

「嘘だ。投げたのではない」

捕えられた若者は傲然と叫んだ。「魚にはぬめりというものがある。洗っていたら手を滑って飛んだのだ。人間には過ちということがある。過ちで飛んだのだ」

「此奴、ぬけぬけと申す」

「問答に及ばぬ、斬ってしまえ」

「待て、待てと申すに」

騒然となる家臣たちを、斧兵衛は大音に押えながら云った。

「過ちであるか、態と致したか、孰れにしても取糺してからのことだ。このまま奉行役まで曳いて参れ、手荒なことをすると許さんぞ」

「仰せではござるが、土民へのみせしめとして此奴は此処で斬るべきだと存じます」

喜兵衛が、我慢ならぬという調子で云った。併し、斧兵衛は固く頭を振り、

「ならぬ、奉行所へ曳け、申付けたぞ」

そう命じて立去った。

法会が済んだ後。……この若者の処置に就て、老臣たちが評議を開いた。