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ちはゆたかなり
地は饒なり
宮本 百合子
「中央公論」1918(大正7)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,874 字 · 57 页
になりたくもありません。私はただ、ほんとの生活がしたい。考えるべきことは、どんなに辛くとも考え、視なければならないものは、どんな恐ろしいものでも視て、真正な生活に、一歩でも一歩でも近づいて行けさえすればいいのです。
たとい、或る人は声楽家でなくても、美くしい声をもっている方がよいのは、真理です。耳がないよりある方がよいのは、明かではありますまいか。
そして、それが真理だと解っているなら、例え自分は極りの悪いほど濁った、嗄がれ声であっても、美くしい声をもっている人を讃め、なおなおたくさんそういう人の出てくれることを願うべきではありますまいか。
私は、そういうことが、心に何の仮面も、虚勢もなしに思える人になりたいのです。
悪いことはどこまでも悪いと主張し、いいことのためには、何が来ようがビクともしない人間になりたいのです。けれども、そう私を修業させてくれるには、あまり違った周囲であることを思わずにいられません。何でもなくすらすらと、微笑んで過ぎて行けることを、一々考え、理窟をつけ、いいか悪いかと区別をして、自分勝手に泣いたり憤ったりしている自分は、馬鹿だと思う人もありましょう。