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ちはゆたかなり

地は饒なり

宮本 百合子

「中央公論」1918(大正7)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,874 字 · 57 页

青空文庫

ハッハッハッ! ホッホッホッ! という声が高まって来ると一緒に、森じゅうの木という木の葉が、波のように白い葉裏を翻しながら、彼に向って泡立って来ました。

ギワーツク、ギワーツク、カットンロー、カットンロー……

ハッハッハッ! ホッホッホッ!

ユーラスは、自分が神様だったのをすっかり忘れてしまって大いそぎで逃げ出しました。そして、また次の日にいくらその谿間に違いないところをさがしてみても、あの綺麗な小川さえ見つけることができませんでした……。

殆どあらゆる種類の伝説と童話とが酵母となって、彼女の生活のどこの隅々にまでも、渾然と漲りわたっていた果もない夢幻的空想は、今ようようその気まぐれな精力と、奇怪な光彩とを失い、小さい宝杖を持ち宝冠を戴いた王様や女王様、箒に乗って月に飛ぶ鼻まがりの魔法使いなどは、皆足音も立てずにどこかの国へ行ってしまった。

そして、面白いお噺のこの上なく上手な話し手としての名誉と、矜恃とを失った彼女は、渾沌とした頭に、何かの不調和を漠然と感じる十二の子供として、夢と現実の複雑な錯綜のうちに遺されたのである。

一面紫色にかすみわたる黎明の薄光が、いつか見えない端し端しから明るんで、地は地の色を草は草自身の色をとり戻すように、彼女の周囲のあらゆる事物は、まったく「いつの間にか」