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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
奇怪なる娯楽園
奇怪なる娯楽園
M県の南部にY市という古風で陰気な、忘れ果てられた様な都会がある。商工業が盛んな訳ではなく、といって、交通の要路に当る訳でもなく、ただ、旧幕時代の城下町であった為に人口が多く、漸く市の形を為しているに過ぎないのだ。
その眠った様なY市の郊外に、実に途方もない遊園地を拵えた男がある。
この世には、時々、何とも解釈のつかぬ、夢の様な、突拍子もない事柄が、ヒョイと起ることがあるものだ。地球の患う熱病が、そこへ真赤な腫物となって吹き出すのかも知れない。
遊園地を拵えた男は、Y市一等の旧家で、千万長者と云われる喜多川家に生れた一人息子で、治良右衛門という妙な名前の持主であった。
こういう身分の人には珍らしく、喜多川治良右衛門には、家族というものがなかった。父母は数年以前に死んでしまい、兄妹とてもなく、彼自身もう三十三歳という年にも拘らず、妻を娶らず、多勢の召使の外には、全く係累のない身の上であった。
親族は数多くあったけれど、彼の行状を兎や角云い得る様な怖い伯父さん達は、とっくに死に絶えてしまい、その方面からもうるさい苦情が出る気遣いはなかった。