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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
「大野さんじゃなくって?」
声をかけると、先方の足音がピッタリ止った。覗いたとて見えぬけれど、木の葉の層の事故、声はよく聞えるのだ。
「折ちゃんかい」やっぱり大野雷蔵だ。
「エエ、そうよ。あたし道に迷っちゃって」
「ウン、僕もさっきから、何だか同じ所をグルグル廻っている様な鹽梅だよ。……君こちらへ来られない?」
「駄目よ、行こうと思えば、却って離れてしまうばかりだわ」
事実、声する方へ曲って行くつもりでも、道は気違いの様に、突拍子もない方向にそれているのだ。
「でも、行って見るわ。あなたも、こちらへ来られなくって?」
そこで、二人はてんでんに、現に一尺とは離れず話し合っている、相手のありかを探す為に出発した。そして、案の定、お互に近づこうとあせればあせる程、いつしか、声も聞き取れぬ程遠ざかって行った。
折枝はもどかしさ、不気味さに、汗びっしょりになって、当てどもなく、同じ細道をテクテク、テクテク歩いていた。まだ上げている花火の音が、忘れた頃に、ドカーン、ドカーンと、彼女の心臓を飛上らせた。
暫くすると、彼女はハッと息を飲んで立止った。妙な音を聞いたのだ。耳鳴りではない。