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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
治良右衛門も驚いて声をかけた。
それはサジスト湯本譲次であった。
彼はその迷路の中心で妙なことをしていた。彼の前には三脚架にカンヴァスが立てかけてあり、彼の左手にはパレット、右手には絵筆が握られていた。
「何を描いているの?」
問われると、譲次は、見れば分ると云わぬばかりに、顎でモデルを指し示した。
モデルは地上にうずくまった奇妙な形の青白い肉塊であった。
実に奇妙な形をしていた。顔を地べたにくッつけて、お尻をもったて、足は腹の下に折れ曲り、手は無理な格好で、顔の前に投出されていた。つまりそれは、世にも豊満な、一糸纒わぬ裸体女のモデルであったのだ。
だが、あの皮膚の、異様な青白さはどうだ。こんな不気味な皮膚を持った女が、この楽園にいたのかしら。
「オヤ、あれは原田麗子さんじゃないか。どうしたんだ。あの妙な格好は。身体が折れてしまい相じゃないか。痛いだろう」
治良右衛門がモデル女の正体に気づいて叫んだ。
「痛くはないよ」
譲次が、セッセと絵筆を動かしながら、ぶっきら棒に答えた。
「痛くないことがあるもんか。可哀相じゃないか。止したまえ。このサジストにも困ったものだ」