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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
譲次は、やっと刑事の真意を悟ったのか、びっくりした様に聞き返した。
「ハハハハハハハ、いやなに、必ずしもそういう訳ではありませんがね。併し、……」
「併し、どうしたんです。アア分った。君は僕が下手人だと極めて、拘引する積りでいるんだね。だが、刑事さん、僕を牢屋へブチ込むには、確な証拠がなくてはなるまいぜ。君はそれを持っているのかね。証拠だ。証拠を見せ給え」
「証拠ですか」刑事はゆっくり答えて、麗子の死骸に歩み寄ると、その胸から例の短刀を引抜いた。
「例えば、この短刀です。この鍔のない棒みたいな兇器は、一目で持主が分る筈です。喜多川さん、そうではありませんか」
「如何にも、それは湯本君の奇術用の短剣です。併し……」治良右衛門は、困惑して口ごもった。
「馬鹿なッ、若し僕が真犯人であったら、一目で分るそんな兇器を、死骸の胸に残して置くものですか。それは却て、僕の無実を証拠立ているのだ」譲次が怒鳴った。
「兎も角も、君は一応警察署まで御同行を願わねばなりません。警察署長なり予審判事なりが、君の御意見を伺うでしょう」木島刑事は冷然と云い放った。
「イヤだ。僕は恋人の死骸をうっちゃって、警察なんぞへ行く訳には行かぬ。