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ちきゅうようさい

地球要塞

海野 十三

「譚海」1940(昭和15)年8月~1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,834 字 · 144 页

青空文庫

(ひょっとすると、提督は、わざと私が見えないような風を装っているのではなかろうか。つまり、提督は、私に弱味を見せないために……)

私の方は、いざとなったらX大使が助けに出てくれると思うから、気がつよい。――そこで私は、椅子から立ち上って、提督の方へ近づいた。

すると提督は、安心したような表情になって、

「おお、椅子は、ぴたりと停っている。余は、なにか思いちがいをしたらしい」

提督には、本当に私の姿が見えないようである。そうなると私は、反ってどきどきしてきた。私は、ことさら足音たかく、提督のまわりをどんどんと歩いてみた。

俄然、この効目はあった。

「ややややッ、足音だ。誰かの足音だ。息づかいも聞える。はてな、これはへんだ」

提督は、非常に愕いた様子であった。そして入口の扉の方へいこうとするから、私はそれをさせてはならぬと思い、

「ピース提督、おさわぎあると、貴官の生命を頂戴いたしますぞ」

「ええッ! 誰だ、そういう声の主は……」

「温和しく、貴官の椅子に腰をおろされたい。ちと伺いたい話があるのだ」

「おお、声だけは聞える。息づかいも、聞える。しかるに姿は見えない。