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あおいはらふじんのたいつり

垢石釣游記

佐藤 垢石

佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页

青空文庫

翌朝眼を覚ますと、海は大荒れである。小笠原島の南方に、台風がきているのだと新聞に書いてあった。畳を倒すように、高い大きな波が砂浜に幾重にも倒れてくる。沖の初島は波頭の飛沫の靄に、薄くかすんでいる。鴎の群は、湾内深く避難して網代の本村の前に浮んでいた。熱海の前の白い波の上を、まっしぐらに南へ走るのは、鰹船が網代港を指して逃げているのであろうか。

鯛釣は諦めだ。折角、楽しんでいたのに――三人が朝の茶を飲んでいるところへ、船頭がやってきた。

「残念です。これでは、一両日出漁できないかも知れません」

と、いう。けれど、この二、三日この方初島のまわりで、中鯛と貝割が大分釣れはじめたそうだ。一日に一人で十七、八枚もあげた釣人があったという。もう一週間もたてば、餌の白蝦が網にかかるであろうから、そうなれば鯛釣は一層有望である。殊に、この時化の後は、鯛は盛んに餌を求めて活動するから、それを楽しみにしていて下さい、と船頭は話すのである。

私等は、いつまでも雨雲が垂れている沖の白い波をながめていた。