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つぼ
壺
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页
ように、しずかなおなじ歩度でずんずんあゆみ去っていった。
それからさらに三日いて又右衛門は万字屋を立った。藤堂家からもらった暇の期日がきたのである、……熊野川を越して、海のほうへと下る道をほんの僅か来たときだった、道傍の並木の蔭からとつぜん二人の若い男女があらわれ、又右衛門のゆくてを塞ぐように土下座をした、それは七郎次とおぬいであった。「おねがいでございます」七郎次はこちらを見あげながら云った、「わたくしをお屋敷へおつれ下さいまし、どんな辛い勤めもいといません、おつれ下すってひまひまに刀法を教えて頂きとう存じます、なにとぞ、……なにとぞ……」そう云うそばから、おぬいもともども、道埃の上へひたと面を押しつけた。又右衛門は暫くその姿を見おろしていたが、やがて穏やかな調子で、「手をあげるがよい」と云った、「……それほど望むものならばつれてまいろう、刀法も教えろとなら教えぬこともない、しかし七郎次、そのうえ刀法をまなんでどうするつもりだ」「はい道の極意をきわめたいと存じます」「それからどうする……」しずかに又右衛門は問い継いだ、「道の極意をきわめる