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つぼ

壺

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页

青空文庫

ひとでございます、このひとは瘤七さんの許婚ですが、それは口に云えない苦労のしつづけでございますの、なぜかと申しますと、あのひとは瘤七さんをどうかして元どおりまじめなお百姓にしよう、おさむらいに成るなどという考えをやめさせようとして、どなられても叩かれても側についていて、おりさえあれば泣きながら意見をしているんです、……去年の春ちょっと伊賀の上野というところへ奉公に出たこともあるのですけれど、瘤七さんのことが心配でたまらなかったのでしょう、間もなく戻って来てから、またずっと付きっきりで面倒をみております、ほんとうにいじらしいくらいでございますよ」

息もつかずに話すのを聞きながら外記はしずかに食事を済ませた、それからほっとしたような婢の顔を見やって、「……だが、瘤もないのになぜ瘤七というのだ」ときいた、「ああそれはこうでございます、誰が云いだしたのかわかりませんけれど、あのひとにはどこかに瘤がある、その瘤が剣術をつかうのだ、そんなことを云う者がありまして、それから瘤七という綽名がついたのでございます、そういえばほんとうにあのひとにはどこかに瘤がある