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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

木と木と重なり合う対岸の森の深さが、こちらの街道から見られるようなところだ。

「及ばずながら、自分も復古のために働いている。」

その考えが彼を励ました。彼も、師を忘れてはいなかった。

家に置いて来た娘お粂のことも心にかかりながら、半蔵はその足で木曾の桟近くまで行った。そこは妻籠あたりのような河原の広い地勢から見ると、ずっと谷の狭まったところである。木曾路での水に近いところである。西よりする旅人は道路に迫った崖に添い、湿っぽい坂を降りて行って、めずらしい草や苔などのはえている岩壁の下の位置に一軒の休み茶屋を見いだす。半蔵もそこまで行って汗をふいた。偶然にも、通弁の男を連れ、荷物をつけた馬を茶屋の前に停めて、半蔵のそばへ来て足を休める一人の旅の西洋人があった。それ異人が来たと言って、そこいらに腰掛けながら休んでいた旅人までが目を円くする。前からも後ろからものぞきに行くものがある。もはや、以前のような外人殺傷ざたもあまり聞こえなくなったが、まだそれでも西洋人を扱いつけないものはどんな間違いを引き起こさまいものでもないと言われ、外人が旅行する際の内地人の心得書なるものが土屋総蔵時代に馬籠の村へも回って来ている。