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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

「鉄砲の音に驚いて来て見たのさ、でも危ないネエ、そんなものを玩具にしちゃ」

「大丈夫さ、弾丸なんかありゃしないもの」

「まア」

「たった一つ入って居たんだよ、そいつが外れて、あの浪人野郎の鬢の毛を少しっただけなんだ、――こんな鉄砲なんか、鳥脅かしにもならないや」

「あッ」

お滝が止める間もありません。海道丸の手があがると、短筒は大きく弧を描いて、千仞の谷底へ放り込まれたのです。

「清々して宜いやな、――ところで、姐御に頼まれたものを二枚」

海道丸は腹掛を探って、二枚の絵図面の切れを取出し、皺を伸すように岩の上に並べるのでした。

「まア、何うして手に入ったの?」

「一枚は、毒に中てられてウンウン言って居る若いお武家の懐から抜いたのさ」

「まア、お前だったのかい」

「一枚はその女が夢中になって、巾着を落して行くから、後をつけて行って拾ったんだよ。それから、山浦とかいう武家から抜いてやったのと、姐御が自分で持っているのを勘定すると丁度四枚だろう、あと三枚――」

海道丸は小さい掌を出して指を折るのです。

「まア、いやに行届くんだね」

お滝も少し呆気に取られました。

「いやに物驚きをするぜ、尤も姐御がそうやって、まア、まア――と眼を一杯に見開いたところは馬鹿に可愛らしいんだが」