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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

「叩いて見ましょうか」

と丈太郎。

「いや、叩くのは言葉の綾だろう、押して見られるが宜い」

「斯う」

山浦丈太郎は肩を三猿に当てて、ウーンと押しました。薄傷ながら数ヶ所の手傷を受けて居るせいか、なかなか思うような力は出ない様子です。

とみ斯う見して居た空善は、ハタと膝を叩きました。

「唯押しただけではいけない、この岩は一枚扉になっているが、龕灯返しの仕掛けだ、だが、樵夫や狩人に触られて、扉が開いては何んにもならない。唯触った位では開かぬように、この通り岩扉の根にゴロタ石が積んである」

雲水空善は、早くも扉の仕掛を見破ったものか、三猿を彫んだ大岩の前に積み重ねた、ひと抱えほどの岩を幾つも幾つも取除きました。

「これでよし」

と言った時は、三猿の岩はその根のあたりに、少しばかりの隙間さえも見せて、明かに龕灯返しの一枚扉ということが解ります。

「どれ」

山浦丈太郎が立って、三猿の左の方、何んにも彫んでないところを押すと、岩はキシミながら動いて、人間が漸く通れるほどの口を開けました。頭の上からは、バラバラと散る小石、土くれ、苔の塊り。

「灯が欲しいな」

空善は真っ暗な空を覗きながら言いました。