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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

「今頃此処で火を点けて、遠方からでも関所役人に見付けられるとうるさい。中へ入って工夫をしましょう。幸い火打道具の用意はある」

山浦丈太郎は何んの恐れ気もなく、穴の中へズイと入りました。続いてお滝、最後は空善。

入口に背を向けて、丈太郎は早くも火打鎌を鳴らします。その頃の武家のたしなみで、火打袋と懐中蝋燭は持って居たのです。

心細い灯ながら、それでも四方の様子だけは朧ろ気に判ります。多分火山岩の堆積の間に出来た自然の風穴を利用して、その口を塞いだものでしょう。中の空気なども、冷やりとして思いの外に爽やかです。

「お」

真っ先に立った山浦丈太郎が、凝然として立止りました。

「何んじゃな」

後から差のぞく空善の眼に映ったのは、白々と晒れた骸骨――しかもボロボロの着物を着け、刀を抱えて悠然と何やらに凭れて居るではありませんか。

「あッ」

お滝はさすがに悲鳴をあげました。が、次の瞬間、骸骨の凭れて居るのは、幾十とも知れぬ千両箱のうちの一つで、その箱も大方腐って釘が緩んだものか、一方の隅から、吹き立てのように見える小判が、ゾクゾクとハミ出して居ることが判りました。