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おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
「新青年」1939(昭和14)年11月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页
百年越の怨
「あ、灯が尽きた」
山浦丈太郎は、燃え残る懐中蝋燭を捨てました。細い紐のようになった懐中蝋燭が、今まで燃えて居たのが不思議な位です。
「右の棚――石の凹みの中に、蝋燭がある、百年前のものかも知れないが」
空善は早くもそんな事まで気をくばって居たのでしょう。丈太郎は大急ぎで手を伸すと、石の凹みにあった二三本の白いものを掴み、まだ足元の岩の上で燃えて居る懐中蝋燭から、灯を移しました。
百年前の蝋燭が首尾よく燃えると、パッと一時に眼界が開けて、半ば腐った千両箱――三四十もあろうと思うのが、目に入ります。
「先ず考えよう、いろいろの罪を作って、百年間眠った黄金だ、百年間の眠から醒めるだけでも、もう四人の生命を犠牲にして居る、この先、幾人の血を吸う事か――」
空善は冷たい岩に腰をおろして、こんな事を言うのです。
百年越の怨
「ハッハッハッハッハッ」
不気味な笑いが、何処からともなく響きます。三人はお互の顔を振り返って見ましたが、空善も丈太郎も、お滝も、笑うどころの沙汰ではありません。
「此処だよ、解らないのかえ、間抜だなア」
お滝にはわけても聴覚えのある声です。フト天井を振り仰ぐと、二丈ばかり上、岩と岩との隙間から青白い月の光が洩れて、その月の光の中に、面白そうに少年の顔が笑って居るではありませんか。