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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
僕がわたしてあげます」
なにをおもったか太刀川時夫は、艇長をうながして、懐中電灯をうけとると、これをケレンコの顔にさしむけた。
ケレンコは、不意にまぶしい電灯をさしつけられて鬼瓦のような顔をしておこった。
「こら、何をする。無礼者めが」
なにか意味ありげに、にやにや笑っている太刀川青年の手から、ケレンコはあかりのついた懐中電灯をひったくった。
このとき、くらがりの室内を、何者ともしれず、こそこそと床上をはい、そして扉をぱたんといわせて、外へ走りでた。
それに気がついたダン艇長は、あっと叫ぼうとして、あわてて自分の口をおさえた。
停電事件と同時に、艇内に、なにかしらふしぎなことが起っているらしかった。
ところがそのとき、操縦長が、誰にもそれとわかる悲壮なこえで、艇長によびかけた。
「ああ艇長。本艇はもうだめです。ぐんぐん暴風雨におしながされだしました。方向舵が直らないのです。どうしてもだめです」
それは本当だった。羅針儀の針はぶるぶるふるえていた。
「それはそのはずだ」
太刀川青年がケレンコに聞えよがしにいった。
「あのとおり方向舵が曲ってうごかなくなってしまったんだ。