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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

広一郎は云った、「これからは行状を慎むこと、もし不行跡なことをすれば、呑み代はむろん停止するし、公の沙汰にするからそのつもりでいろ、それから、今日の事は決して他言するな」

「おれだって自分の恥をさらしはしないさ」

「そこに気がつけば結構だ、忘れるな」

そして広一郎は三郎助と共に去っていった。

要平はそれを見送りながら、いかにも腑におちないという顔つきで、首を傾げたり、片手で頭を掻いたりした。もう一方の手は、まだずり下った袴を押えたままである。

「おかしなやつだな」と彼は呟いた、「茗荷屋のはなしは去年のことだし、断わられてからおれはなにもしやしない、手をひくもなにも、おれはまるっきり忘れていたくらいじゃあないか、……わけがわからねえ」と彼は首を振った。「化かされたような心持だ」

広一郎と三郎助は坂をおりていった。三郎助は要平のことを笑いながら、「袴の帯を切ったのはみごとだ」と云った。梶が剣術をやるとは知らなかったし、あんなにすばらしい腕があるというのは意外だ、と云った。広一郎は苦笑した、おれだって侍の子だから、剣術ぐらい稽古するさ、江戸邸ではやかましいんだ。