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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

女中が案内したのは、隅のほうの、暗くて狭い部屋であった。そのなんの飾りつけもない、古畳の、まるで行燈部屋のように陰気なところで、一人の侍が蝶足の膳を前にして、酒を飲んでいた。広一郎はあっけにとられた、盃を持って「よう」と振向いたのは、佐野要平であった。

「よう、これはどうも」と要平は云った、「御馳走になってますよ」

「なんの用があるんだ」

「御挨拶ですね、今日は五日ですよ」

広一郎は思い出した。なんだ、そのために来たのか。約束ですからな、約束の第一回から忘れられては困りますよ、と要平は盃を呷った。お宅へ伺ったら赤根だと云うので、すぐさまあとを追って来たわけです、ひとつどうですか、と要平は云った。

「奢ってくれるのか」

「冗談でしょ、貧乏人をからかっちゃいけません」

広一郎は坐った。紀伊がいたことは知らないらしい、罪ほろぼしに少しつきあってやるか、と思ったのであった。

その夜、――広一郎は「なんでもなかったよ」と云い、要平のことを話した。紀伊は頷いて、楽しゅうございましたわと囁いた。そして、二人きりの時間(それはいつもごく短いものであったが)には、赤根の楽しかったことを、よくお互いに囁きあった。