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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

甘栗

「あなた、今日は少し御相談があってお母さんがお見えになったんですよ」

と妙子さんが紹介した。

「実は宅の家作が一軒急に明いたのでございます。清之介さんも御存知じゃなくて? 宅から停留場へ出る道で、赤いポストの側の門構えでございます」

と母親は直ぐに喋り出した。

「こゝよりも余っ程大きくて日当りが好いんですよ。肺炎の後は一体なら転地する方が安心ですけれど、然うも参りませんから、ねえ、あなた、越しましょうよ」

と妙子さんも口を添えた。

「はゝあ、私達が引越すんでございますか?」

と清之介君は初めて意味が分った。

「まあ、他人ごとのように仰有って。オホヽヽヽ。お母さん、私達お家賃は払いませんよ」

「いゝえ、敷金まで入れて貰いますよ。オホヽヽヽ」

と母子が面白そうに笑って、もう転宅が定ってしまったのである。

甘栗

清之介君が支配人の令嬢妙子さんを貰ったのである。会社の同僚の語を借りて言えば、拝領したのである。拝領にせよ、頂戴にせよ、兎に角清之介君が貰ったので、支配人が令嬢の妙子さんの配偶に清之介君を貰ったのではない。

この辺の関係を最初から内外へ表白する為めに、結婚式は清之介君の手狭な借家で挙げられた。