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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

しかし大きいです」

と大場君は話を具体的にした。

「千坪かい?」

「千二百坪だ。三万円からになる」

「それを買って直ぐ三十円に売るといくら儲かる?」

「直ぐ売れるくらいならその人が売ってしまわあね」

「それも然うだ」

「心細いブロカーだな」

「もっと手頃なのはないかい?」

「あるとも。八円のがある」

「遠いだろう?」

「国分寺の奥だ」

「やれ/\」

「しかし二十円以上出したんじゃ持ち堪えられないからね。安いところを買って長生をするに限る。僕は多摩川の向うの山を二円で買ってある」

「幾坪買ったい?」

「五千坪」

「豪く買い込んだね。一万円じゃないか?」

「今までの儲け溜めさ。金利さえ打棄れば宜いんだから、これだけは放さない」

「遠大の計画を立てゝいるんだね。二円ぐらいなら僕も買う。しかし一万円とは道楽にしちゃ大成功だぜ」

と千吉君が感心すれば、

「それに地所家屋がございますからね」

と安子夫人も大場君の徳を讃えた。

千吉君は尚お大場君と話し込んで、荻窪へ郊外散歩ながらお供をすることになった。安子夫人は唯の道楽でないと思って、殊に快く見送った。門を出た時、ポチが後追いをしたので、

「好い犬だね」