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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

日本家屋は滅多にない」

「それは皆新築だもの。新たにやるなら何人にしても便利なものを建てるからね」

「君の家も然うかい?」

「無論さ。最新式だから一つ念を入れて見てくれ給え」

「それは然うとナカ/\遠いね」

「もう直ぐだ。駅から十分さ。この辺の駅から十分は大抵懸値があるんだが、僕のところは正味十分だ。尤もこんなにブラ/\歩いちゃ十五分ぐらいかゝるかも知れない」

「斯うっと、駅に着いたのが十時きっかりだったから、もう十三分たっている」

と千吉君は時計を出して見ながら言った。

「僕の足だとこの角で丁度九分さ。彼処に屋根の馬鹿に尖った赤塗りの家があるだろう? あれは木下君のところだ」

「あれかい? 大将、好い家を持っているんだね」

「何あに、ケバ/\しいばかりで成っちゃいないよ。あの少し向うにクリーム色の家が見えるだろう?」

「見える/\。屋根がないじゃないか? 変な家を拵えやがったな」

「あれが僕の家だよ」

「あれかい? これは驚いた」

「君は建築の方は未だ素人だね。木下君のは旧式で僕のは新式さ。すべて家は屋根が大きいほど旧式だよ。穴居時代は家全体が屋根だった。山を屋根にしているんだから大きいや。