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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「――今度、花屋敷を買うそうですね」

浅草にほとんど毎日いて、そうしたことを私は大森の喫茶店のバーテンから初めて聞くのだった。蛇の道は蛇だと感心した。

「ふーん。花屋敷をね」

――往年の名物も今は廃墟のようになっていた。廃墟といえば、浅草のレヴィウの発生地のような水族館も廃屋のままで、深夜にその屋上のあたりから踊り子のタップの靴音が聞えてくるという怪談さえ出ているほどの惨憺たる有様である。(これはその後間もなく取りこわされた。「カジノ・フォーリー」のかつてのファンは夢の跡を失ったのである。)

――私の手もとに明治四十年発行の東京市編纂「東京案内」という本があるが(この明治四十年というのは、私の生れた年なので、この本には特別の感情が持たれるのだが)浅草区のところに、公園の地図が入っている。見ると、それに出ている大きな食いもの屋は大方今日も残っているのだが(たとえば田原町の鰻の「やっこ」、広小路の牛肉の「ちんや」、天婦羅の「天定」、仲見世の汁粉の「梅園」、馬道の鳥の「金田」、花屋敷裏の料亭「一直」、千束町に入って「草津」、牛肉の「米久」等。)興行方面となると内容はもとより名前もほとんど変っている。